Newsletter vol.7 次のつぎの世代
長沼 恒雄
ここ数年,私は会社経営という本来の仕事以外に,地域社会の商工業の活性化のための活動を行っている.目下,国はDXを中心としたスマートシティ政策を進めているが,活動メンバーは比較的高齢であり、次の世代を担う20~30代の参加は少ない.このような状況で、次のつぎの世代にあたる今の小中学生が学校でどのようなデジタル(情報)に関する教育を受けているのか興味を持ち,調査をおこなった.
文科省の新学習指導要領(プログラミング教育関係抜粋)(1)によると,小学校では「児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」を行うとしている.具体的にどのようなことをしているのか,加東市内にある小学校にお願いをして、4年生25名のプログラミング授業参観の機会を得た.
当該授業では,児童が作成した自己紹介のプログラムの発表を行った.発表にはソフトバンクのペッパー君を用いる.教室の前中央にペッパー君を設置し,その横に児童が立ち,順番にプログラムを実行する.児童の代わりにペッパー君が身振り手振りをしながら発言し,胸にあるスクリーンに画像も表示しながら自己紹介をする.担任の先生は教えているというよりは,ファシリテーター的な役割をしているような印象を受けた.
動作プログラムは事前に児童がクロムブックより,WiFi経由でペッパー君にインストールしている.一人,平均1~2分ほどを使って全員が発表した.音楽や画像も上手に使い,ペッパー君に動きを加えながら,面白い自己紹介であった.他の人の自己紹介を見ながら,授業中にプログラムを追加,修正する児童もいて,そのたびにプログラムを自席からペッパー君に転送し.再び自己紹介をしていた子もいた.
ある程度の制限はかかっていると思われるが,授業中でもインターネットで外部のサイトに自由にアクセスして,プログラム作りに関係ある情報を閲覧し,写真などのデータのダウンロードもしている.日本に来て間もないベトナム人の児童も3名ほどいたが,彼らはベトナム語のサイトにアクセスし情報を得ていた.さらに発達しょうがいの児童もみんなと一緒にペッパー君を通して自己紹介していたのも印象的で,デジタルがダイバーシティの実現に一役かっている現実を目の当たりにすることができた.
児童には小学校から全員一人ずつクロムブックが配布されており,週末には家に持って帰って自由に使って良いことになっている.私は週末に地元の有志が開催している小学生向けのロボットスクールにボランティアで参加しているが,この貸し出されたクロムブックを使って,ロボットコンテストに向けて,プログラミングの技術を磨いている児童もいる.
このように,ものごころついた時からスマートフォンに触れ,小学校からはマイノートブックが与えられ,通信は光回線・5Gという環境下で, SDGs,ダイバーシティ,インクルージョンの教育も実施されている.コロナ禍,アフターコロナを子供時代に過ごすこの子供たちが活躍する20~30年後,様々な指標が指し示す未来はあまり明るいものではないが,彼らがデジタル技術を駆使してイノベーションが加速させることは間違いなく,これからの地域社会を変えていく希望であると確信した.
(1)https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1416331_001.pdf
長沼 恒雄,博士(情報科学)・MBA
アスカカンパニー株式会社 代表取締役 兼 CTO(最高技術責任者)
株式会社サクラクレパスで品質管理を担当.その後,父親の経営するアスカカンパニー株式会社に転職し,アメリカの現地法人社長などを経て,2代目の後継者として約20年間社長として会社を牽引.現在は3代目の弟の長沼誠に社長をバトンタッチ.
Ken Naganuma, Ph.D.(Information science),MBA
Executive Director and CTO, Aska Company Co.,Ltd.Prior to working at Aska company, he was working at quality control department of Sakura color products corp. Aska company was founded by his father in 1968 and he became the president of a local subsidiary in the U.S. He has led Aska company in Japan as the president for about 20 years. He is now passing the baton to his younger brother, Makoto Naganuma, the third-generation president.