コンテンツへスキップ ナビゲーションに移動

ASKA CONNECT

  • お知らせNEWS
  • 会社概要COMPANY
  • アスカコネクトの考えIDENTITY
  • 事業内容SERVICE
  • 製品一覧PRODUCTS
  • ニュースレターNewsletter
  • お問い合わせCONTACT
  • ホームHOME
Newsletter
  1. HOME
  2. Newsletter
  3. NEWSLETTER
  4. Newsletter vol.31 論語と算盤とSDGs④ <豊田佐吉>
2025年1月19日 / 最終更新日時 : 2025年1月19日 wpmaster NEWSLETTER

Newsletter vol.31 論語と算盤とSDGs④ <豊田佐吉>

豊島 敦

 昨年末、ホンダと日産が経営統合するというニュースが流れた。トヨタ、フォルクスワーゲンに次いで販売台数世界第3位の自動車会社になるという。かつて自動車業界ビッグ3といえば、ゼネラルモーターズ、フォード、クライスラーの米国の3社を指していたことを考えると隔世の感がある。また、年の瀬迫った12月25日には、長年スズキをトップとして牽引してきた鈴木修氏の訃報があった。軽乗用車アルトの開発、インドでの合弁事業など軽自動車業界発展への功績は大きい。

 今や世界企業となった日本の自動車会社であるが、スズキの創業者鈴木道夫、ホンダの本田宗一郎、そしてトヨタ自動車の祖業で自動織機を開発した豊田佐吉はいずれも静岡県遠州地方の出身であることをご存じだろうか。遠州地方には、「やらまいか」という言葉がある。「やってみようではないか」、「とにかくやってみよう」といった意味で、遠州の人々の進取の気質、旺盛なチャレンジング精神を表している。世界をリードする自動車会社が遠州発祥ということは、こうした気質もあろうが、遠州地方には報徳思想が普及していた影響も大きいのではないかと思う。

 二宮尊徳の弟子は、各地に報徳社を設立し、地元の農家、実業家たちに尊徳の経営哲学を学ぶ場を提供した。とくに遠州地方は報徳社が多く作られ、豊田佐吉の父・伊吉は、遠州山口村(現在の静岡県湖西市)の報徳社の中心人物でもあった。豊田家は兼業農家で伊吉は大工、妻・ゑいは機織りをしていた。佐吉も小学校を出ると父のもとで大工仕事や報徳思想を学び、長じては山口夜学会という若手の勉強会を主宰していた。そこでは、中村正直訳「西国立志編」を読んでいたようだ。この「西国立志編」は産業革命に貢献したイギリスの発明家や起業家たち(蒸気機関のワット、紡績機のアークライトなど)の立志伝が短い章にまとめられ、自ら努力する「自助」の精神で庶民が創意工夫、苦労を重ねた末に成功するという物語となっている。冒頭の一節「天は自ら助くる者を助く」という言葉を聞かれた方も多いのではないか。このように、やらまいか魂、報徳思想の至誠、勤労を学んだ佐吉らは、自分たちも努力次第で成功を収めることができると勇気づけられたに違いない。こうして佐吉は母の機織りの仕事を楽にするため、自動織機を開発しようと決意したという。

湖西市の豊田佐吉記念館
佐吉生家
生家内部
明治29年 木鉄混製動力織機

 晩年に米国を視察した佐吉は、大量生産により自動車が普及しているのを見て、自動車事業への進出を夢みた。豊田自動織機が自動車の開発に着手したのは佐吉の死後であるが、佐吉の経営方針は「豊田綱領」としてまとめられた。ここには、報徳思想のエッセンス、至誠・勤労・分度・推譲が盛り込まれており、佐吉が若き日に学んだ報徳思想の経営哲学の実践に取り組み、社内に根付せていたことが窺われる。

 

 佐吉が亡くなって70年後の2000年、米国でハイブリッド車プリウスが発売された。当時の米国でのガソリンの小売価格は、1ガロン(3.78リットル)、1ドル。小型の日本車であれば満タンでも10ドルほどであった。ハイブリッド車は、地球温暖化など環境問題に敏感な一部の“意識の高い”人のものと冷ややかな反応で販売は苦戦した。一方の米国ビッグ3は、安い原油価格を背景に燃費は後回し、利幅の大きい大型SUVの販売に注力していた。小型車は事故の際に危ない、大きいほうが安全で良いという宣伝文句もあった。販売促進のためにオートローンを拡充し、信用力の低い低所得者いわゆるサブプライム層にもローンを付けた。サブプライム層へのローンは高い金利がとれ、本業の自動車事業の収益を補うようになると、サブプライム層への住宅ローンにも手を染めた。その後、原油高騰、景気低迷などにより大型車の販売は低迷、2008年には、低所得者層への住宅ローン焦げ付きに端を発したリーマンショックが起きる。無理なローンで燃費の悪い大型車を売る戦略は、「道徳なき経済」でサステナブルでなかったということであろう。

 それから20年あまり経った現在、原油価格高騰やEV車の様々な課題が如実となり、ハイブリッド車の優位性が明らかとなってきた。佐吉の遺訓のとおり、研究と創造の結果として「時流に先じる」ことができたという事ではないだろうか。トヨタがビッグ3を凌駕し始めた90年代、トヨタの経営、生産手法が米国でも盛んに研究された。筆者もビジネススクールでQC活動“Kaizen”、部品在庫管理システム“Kanban”などを耳にし、トヨタ自動車の社内用語が、英語で研究対象とされていることに驚いた。豊田綱領は、Toyoda Principles: Five Main Principles of Founder Sakichi Toyodaとして広く知られている。佐吉の偉業は、自動織機を発明したことにとどまらず、報徳思想を実践し、日本的経営の優位性を世界に知らしめたことにあるのかもしれない。

 豊田佐吉記念館は浜名湖西部の静岡県湖西市にある。車でないと少し行きにくい場所ではあるが、近隣には東海道の新居関跡などもあり、文化豊かな地である。「障子を開けてみよ、外は広いぞ」と言った佐吉がこの場所で何を考え、どう行動したのか、追体験するのも悪くない。お近くに寄られた際は是非一度立ち寄られることをお勧めする。


【参考・引用】
・松沢成文 「教養として知っておきたい二宮尊徳」PHP出版・

・金谷俊一郎「現代語訳 西国立志編」PHP出版

・豊田佐吉物語 https://www.toyota-shokki.co.jp/company/history/toyoda_sakichi/index.html

・トヨタ自動車75年史 https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/index.html

豊島 敦 (Toyoshima Atsushi)

株式会社アスカコネクト 顧問

新卒で全国信用金庫連合会(現 信金中央金庫)に入庫、おもに投融資業務に携わる。1997年~2002年ニューヨーク支店にて、北米クレジット投融資、ストラクチャードファイナンス投資などを担当。その後、ニューヨーク駐在員事務所長、名古屋支店長、法人営業推進部長、中小企業金融推進部長を歴任。2021年理事に就任、2024年6月退任。現在は常勤の他、株式会社地域金融研究所 特別顧問、クオンタムリープベンチャーズ株式会社 アドバイザー、 及び Tranzax株式会社 顧問を務める。

W.P. Carey School of Business , MBA

記事カテゴリ
NEWSLETTER
NEWSLETTER

前の記事

Newsletter vol.30 新春特別対談『経営者・幹部のリスキリング』
2025年1月5日
NEWSLETTER

次の記事

Newsletter vol.32 論語と算盤とSDGs⑤ <岡田良一郎>
2025年2月16日
メルマガに登録する

カテゴリ

  • NEWSLETTER

最近の投稿

Newsletter vol.34 論語と算盤とSDGs⑦ <伊藤忠兵衛>
2025年4月19日
Newsletter vol.33 論語と算盤とSDGs⑥ <御木本幸吉>
2025年3月19日
Newsletter vol.32 論語と算盤とSDGs⑤ <岡田良一郎>
2025年2月16日
Newsletter vol.31 論語と算盤とSDGs④ <豊田佐吉>
2025年1月19日
Newsletter vol.30 新春特別対談『経営者・幹部のリスキリング』
2025年1月5日
Newsletter vol.29 論語と算盤とSDGs③ <渋沢栄一>
2024年12月19日
Newsletter vol.28 論語と算盤とSDGs② <二宮尊徳>
2024年11月18日
Newsletter vol.27 論語と算盤とSDGs① <序>
2024年10月19日
Newsletter vol.26 社長が博士課程の学生になると何が起こったか⑫ <完>
2024年9月18日
Newsletter vol.25 社長が博士課程の学生になると何が起こったか⑪
2024年8月18日
COPYRIGHT © ASKACONNECT CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

Copyright © ASKA CONNECT All Rights Reserved.

Powered by WordPress with Lightning Theme & VK All in One Expansion Unit by Vektor,Inc. technology.

MENU
  • お知らせ
  • 会社概要
  • アスカコネクトの考え
  • 事業内容
  • 製品一覧
  • ニュースレター
  • お問い合わせ
  • ホーム
PAGE TOP