Newsletter vol.47 人材育成のすゝめ⑤
林 万美子
前回までの連載では、若手を中心とした人材育成が組織にもたらすメリットについてお伝えしてきました。今回は、「会社のあり方を、どう社員と共有するか」について考えてみたいと思います。
以前、「経営方針を自分事として捉えている社員は驚くほど少ない」というお話をしましたが、皆さまはどのように感じられたでしょうか。経営者は伝えているつもりでも、深く理解しているのは幹部層のみ。他の社員は、耳には入っていても記憶や意識には残っていない……。残念ながら、これは多くの企業で起きている現実ではないでしょうか。
これまでは「企業が人を選ぶ」時代でしたが、すでに「企業が選ばれる」時代へと突入しています。「この指とまれ!」と掲げたとき、報酬のためだけに働く人よりも、会社の方向性に共感し、自律的に動ける人が集まるに越したことはありません。そうした人材をいかに確保し、共創の場をつくれるかは、経営者の重要な仕事のひとつと言えます。
会社はどこを目指すのか
多くの企業では、存在意義を示す「経営理念」を掲げ、その下に長期・中期・短期の経営計画を策定されていると思います。経営者や企画担当の方々が、多大な苦労を重ねながら目標や活動計画を練り上げている姿を、私自身これまで数多く拝見してきました。
しかし、その計画の「背景」や「未来への想い」まで社員に届いている企業は、決して多くありません。特に中小企業においては、代表者が社員に向け、自分の言葉で会社の未来を語る機会を持つことが、今後ますます重要になっていくと考えています。
経営理念と中期経営計画の「再定義」
まずは「経営理念」についてです。
皆さまの会社の理念は、いつ、誰が、どのような意図で定めたものかご存じでしょうか。創業以来の理念を大切に受け継ぐことは素晴らしいことですが、「昔からあるものだから」と形骸化してはいないでしょうか。大切なのは、今の時代に合わせた「解釈」や「再定義」です。理念は抽象的な言葉になりやすいからこそ、目指すべき姿を具体的に言語化し、共通のイメージとして共有することが不可欠です。
次に「中期経営計画」についてです。
中小企業では未作成のケースも散見されますが、実はこれこそが組織にとって非常に強力な羅針盤になります。アスカカンパニーでも、かつては「中小企業に中期計画は不要」と考えていた時期がありました。しかし、当時のトップが学びを深める中で、「中小企業にこそ必要だ」と方針転換しました。変化の激しい現代において、中期計画は一度作って終わりではなく、毎年見直しを重ねながら精度を高めていく「生きた計画」であるべきではないでしょうか。
現在アスカカンパニーでは、幹部社員に経営を学ぶ機会を提供したり、一般社員には研修を通じて自社分析を行う機会を設けることで、「計画を立てる力」の育成に取り組んでいます。こうした取組は一朝一夕に成果が出る取り組みではありません。しかし、経営者と社員が共に悩み、考え、数字を積み上げながら計画をつくっていく。この過程を経て策定された計画は、もはや他人事ではなく、「自分たちのストーリー」へと変わっていきます。そして、その積み重ねが、会社をより強くしていくのだと考えています。
経営理念や計画を「生きたもの」にするために
経営理念や計画を「生きたもの」にするためのヒントとして以下3点にまとめました。
1.再定義と言語化
古い理念に現代の解釈を加え、誰もがイメージできる言葉に落とし込む。
2.社長自らのプレゼンテーション
策定の背景にある「想い」を、代表者自身の言葉で全社員へ直接届ける。
3.社員を巻き込むプロセス
幹部社員に経営を学ぶ機会をつくり、共に計画を練り上げることで、「当事者意識」を育む。
会社が掲げる指に、一人でも多くの社員がワクワクしながら集まってくる。そんな「選ばれる企業」への第一歩は、共に未来を描く仲間を信じ、学びの場をつくることにあると考えます。
林 万美子 (Mamiko Hayashi)
株式会社アスカコネクト 代表取締役/MBA
新卒で地元京都の信用金庫に入庫、主に融資業務に携わる。金庫在職中に経営について興味を持ちMBAを取得、2016年に金庫を退社。その後、金庫OBの経営するコンサルティング会社を経て、2018年アスカコネクトを設立し代表に就任、現在に至る。

