Newsletter vol.40 社長を辞めると何が起こったか①
長沼 恒雄
1年ぶりの執筆になります。前回は「社長が博士課程の学生になると何が起こったか」という内容でお話ししました。今回は3回ほどの短い連載として、「社長を辞めると何が起こったか」というテーマでお話しします。少しでも皆さまの参考になれば幸いです。
私の父であるアスカカンパニーの創業者は、65歳で社長職を私に譲り会長になりました。アスカ社員の定年は65歳です。オーナー経営者は自分で引退時期を決めることができますが、私も創業者の姿勢にならいました。社員が65歳で定年(嘱託として残ることは可能)なのに、オーナーだけが例外というのは違和感がありました。さらに後継者(弟)もいましたので、決算期の途中で65歳を迎えるのを避け、64歳で社長(CEO)を退任しました。
退任を決断した理由は、年齢へのこだわりだけではありません。辞める前の8年間に、ビジネススクールで学んだ経営手法をアスカカンパニーに「仕込んだ」という確信がありました。言い換えれば、事業を継続できる基盤を整えることができたと感じたのです。その基盤が本当に機能するかを確かめるには、経営トップが交代することが最も明確な証明になると考えました。
このように説明すると、スパッと会社を離れたように思われるかもしれません。しかし、実際には自分の作った仕組みが想定どおりに機能しているかを確認し、必要に応じて微調整することは重要です。そのため、組織構造が設計どおりに動いているかを見守りながら、経営陣にアドバイスを行っています。また、自称データサイエンティストなので、会社のデジタル化推進にも協力しています。
「社長を辞めた大株主が会社にどのようにかかわるか?」──この問いには、退任から4年経った今でも明確な答えが出ていません。ただ一つ言えるのは、「株主でなくなること」が重要だということです。現在は特別な依頼がない限り、月1回の取締役会と、週1回のシステムデザイン関連の社内打ち合わせにアドバイザーとして参加しています。
こうした状況の中で私自身の起こった大きな変化は、「自由に使える時間が大幅に増えた」ことです。今回の連載では、会社員が定年を迎えたあと、どのような人生を過ごしているのかー誰にでも起こりうるテーマとしてお話しします。私は定年後の生活を事前に計画していたわけではありません。しかし、60歳を過ぎたころから、周囲のお声がけもあり、仕事以外の社会活動に少しずつ関わってきました。自由な時間が増えた今は、その活動により真剣に取り組んでいます。次回以降では、その社会活動について具体的にご紹介します。
長沼 恒雄 (Tsuneo Naganuma)
株式会社アスカコネクト 取締役/博士(情報科学)・MBA
アスカカンパニー株式会社 代表取締役 兼 CTO

