Newsletter vol.42 社長を辞めると何が起こったか③
長沼 恒雄
私は長年、モノづくりの現場に携わってきました。生産システムの設計や産業用ロボットのプログラミングにも関わることが多く、今でもロボット技術には関心を持っています。そんな私が子ども向けロボット教室と出会ったのは、5年ほど前のことです。地元の文化会館を別件で訪れた際、たまたまロボット教室が開催されており興味本位で覗いてみたのが始まりでした。教室はPC関連の仕事をされている地元のKさんが“趣味の延長”として個人で運営しているもので、参加しているのは小学生を中心に7〜8名ほど。勉強するというより、みんなで自由に楽しむアットホームな雰囲気の場でした。
教室は月1回、土曜または日曜の10時〜15時に開かれ、子どもたちは出入り自由。参加費は1回1,000円ですが、会場費でほぼ消えてしまうため、Kさん自身はほとんど持ち出しでの運営です。まさに「1,000円で入れる遊園地」のような存在かもしれません。この教室で過ごす時間が心地よく、私も毎月顔を出すようになり、ときには子どもたちへアドバイスをするようにもなりました。Kさんとは自然と気が合い、良い友人関係を築くようになったのもこの頃です。やがてKさんは、福井県発祥のご当地ロボットコンテスト(ロボコン)を加東市で開催したいという夢を語り始めました。ロボコン自体はコースやルールが整備されており導入のハードルは低いものの(それでも大変ですが)、課題は運営資金とスタッフです。会場費、賞品代、弁当代、印刷費、備品費などを合わせると70〜80万円ほどが必要になり、さらに当日の運営には20名ほどのボランティアスタッフが求められます。
こうした背景から、私もボランティアとして運営に携わり、主に資金集めを担当しています。多くの皆さまのご支援のおかげで、2022年12月に第1回「北はりま稲刈りロボコン」を開催することができました。今年も先月、第4回大会を無事に実施することができました。ロボコンが毎年開催されるようになると、大会の約3か月前からは、ほぼ毎週練習会が開かれるようになります。この時期になると、子どもたちの“やる気スイッチ”が入り、コース練習には順番待ちができるほどです。また、保護者の皆さんの熱量も高まり、自らコードを組みながら子どもと一緒にロボットを仕上げていく光景をあちこちで見かけます。親子が協力しながら課題に取り組む姿は非常に微笑ましく、特にお母さん方の熱心さには毎回驚かされます。大会を重ねるごとに運営も洗練され、継続して参加してくれる子どもたちはどんどん上達していきます。彼らの成長と、親子ともどもの大切な思い出づくりに貢献できることが、私にとって何よりの喜びです。競技の詳細はロボコンのホームページ(https://inekari-robocon.com/)をご参照ください。

今回の連載では、社長退任後に時間の余裕ができたことを機に取り組んでいる、私の二つの社会活動についてご紹介しました。いずれも子どもたちを支援する取り組みです。子どもたちの成長の場をつくることは、私たち大人の大切な役割だと感じています。今回の連載が皆様の何かのお役に立てれば幸いです。
長沼 恒雄 (Tsuneo Naganuma)
株式会社アスカコネクト 取締役/博士(情報科学)・MBA
アスカカンパニー株式会社 代表取締役 兼 CTO
FAA Commercial Pilot

