Newsletter vol.46 人材育成のすゝめ④
林 万美子
前回は、深刻化する人材不足への備えとして、会社が今いる人材に対して、「一人の人として、どう生きたいのか」を考える機会を提供し、前向きに行動する力(心理的資本)を育てる事の重要性についてお話ししました。今回は、実際に研修を重ねた結果、受講生にどのような変化や成長が見られたのか、具体的なデータとともにご紹介します。
研修後のフォローアップが成長の鍵
アスカカンパニーで研修を実施する際、私が最も重視しているのが、フォローアップ面談です。というのも、研修直後は一時的にモチベーションが高まりますが、日常業務に戻るとそのインパクトは薄れ、効果が持続しないケースが多いからです。
下記の図は、あるMind Up研修の記録です。4月から翌年1月にかけて定期的に面談を行い、1年後の目標を100点として、受講生本人に「現在の到達度」を自己採点してもらいました。
・4月(研修前)~7月(研修直後):研修による気づきで、多くのメンバーの自己評価が向上しました。(図の赤枠内)
・7月~10月(放置期間):この間は10月の面談予定をあえて伝えませんでした。すると、他の期間に比べて成長が鈍化している事が見て取れます。
・10月~1月(再加速):「次の面談は1月です。それまでに自分の目標に対して、また努力を継続してください」と事前に伝えていたため、再び自己評価が上昇に転じました。(図の青枠内)
このように、「研修をやりっぱなし」で放置せず、3か月に1度程度、ひとり15分でも結構ですので、面談を継続する事で社員の成長が持続するなら、コストパフォーマンスは極めて高いと言えるのではないでしょうか。どの年齢であっても、「自分でふり返りを行い、適切に成長を実感する」というのはなかなか難しいと思います。具体的に何が出来るようになったかを、先輩や上司、同僚でも良いので、自分以外と共有・確認し、成長を確認する機会を提供すること」が、持続可能な成長、自己効力感への第一歩だと考えています。また、目標自体が与えられた目標=ノルマ、ではなく、自分自身で立てた目標であることがより一層効果があると感じています。

自発的な変化
予想していなかった嬉しい変化もありました。その後の継続研修(StepUp研修)で、メンバーの一人から「皆で一緒の本を読んで意見交換をする読書会がしたい」という提案があったのです。それまであまり読書の習慣がなかったメンバーが、月1冊の本を読む経験を重ねることで、自発的に学びを深める機会を作ろうとしたことに、人材育成や実現傾向(本能的な成長欲求)の奥深さを感じた出来事でした。記念すべき第1回読書会は、メンバー推薦の『小説 上杉鷹山』(童門冬二・著)を読み、組織やマネジメントについて共に考える事が出来ました。会社の「育てよう」という想いに、若手社員たちがよく応えてくれていると実感した出来事です。
「自律型社会人」を下支えする
また弊社では新人向けにStart Up研修を実施しています。いわゆるビジネスマナーとは異なる内容で、最近は外部での実施機会も増えてきました。高校卒業後、すぐに就職する若者の多くは、どうしても社会経験が不足したまま会社に入ります。環境は大きく変わっているのですが、これまで通り両親と住む自宅から通勤する人も多く、社会人としての意識の切り替えが難しい傾向にあると感じていますが、皆さんは如何でしょうか。
私が面談を通じて痛感したのは、仕事のスキル以前に、まず何よりも「自分自身をコントロールする力」の習得が不可欠だという事です。
・自由になる大きなお金(給与)を手にして金銭感覚が乱れる
→ 仕組みを理解しないまま、高額なローンやサブスクの契約をしてしまう
→ その支払のために無理な夜勤を増やし、心身のバランスを崩す
こうした事態に陥る前に、給与明細の見方、家計管理の基礎、メンタルケアといった「お金・時間・心」のセルフマネジメントを様々なグループワークを通じて学んでもらっています。
「自己責任」という言葉で突き放すのではなく、社会的弱者とも言える若手の小さなつまずきをフォローすることは、決して過保護ではなく、今の時代に求められる企業の役割ではないかと考えています。心身ともに健やかに、経済的・精神的な不安なく働いてもらう、それがまた、企業にとっても大きなメリットになると思います。
ここまで、若手に向けた取り組みをお話してきました。 次回は、「会社の方針、きちんと説明できていますか?」について、お話したいと思います。
林 万美子 (Mamiko Hayashi)
株式会社アスカコネクト 代表取締役/MBA
新卒で地元京都の信用金庫に入庫、主に融資業務に携わる。金庫在職中に経営について興味を持ちMBAを取得、2016年に金庫を退社。その後、金庫OBの経営するコンサルティング会社を経て、2018年アスカコネクトを設立し代表に就任、現在に至る。

