Newsletter vol.48 人材育成のすゝめ⑥
林 万美子
皆さまこんにちは。アスカコネクト代表の林です。
昨年から続けてきました「人材育成のすゝめ」も、今回が最終回となりました。これまで5回にわたり、人材育成についてお話してきました。私自身の失敗と成長の経験から始まり、人が変わるきっかけ、会社の方向性と個人の方向性を重ねることの重要性、そして人的資本と心理的資本を育てる具体的な取組についてご紹介してきました。
最終回となる今回は、この連載全体を振り返りながら、これからの人材育成と組織について考えてみたいと思います。
今、企業は大きな転換点にいる
少子高齢化による人口減少は、もはや避けられない現実となりました。多くの企業が採用難に直面し、「人が集まらない」「若手が定着しない」という悩みを抱えています。しかし、少し視点を変えてみると、これまでのような「人が辞めたら採用する」「足りなければ募集する」という発想そのものが限界に近づいているのではないでしょうか。
今後、企業間の差になるのは、どんな人を採用するかだけではありません。採用した人がどれだけ能力を発揮し、成長し、活躍できるかが、より重要になってくると考えています。
人的資本と心理的資本
第1回でお話した通り、若い頃の私は決して模範的な社員ではありませんでした。そんな私が変わることができたのは、能力が高かったからでも、特別な才能があったからでもありません。本気で向き合ってくれる上司がいて、応援してくれる仲間がいて、自分の成長を期待してくれる環境があったからです。その経験を通じて確信したことがあります。それは、「人は適切な支援と成長できる環境があれば変わることができる」ということです。
これまで人材育成というと、
・研修を実施する
・資格取得を促す
・スキルアップを支援する
といった施策が中心でした。もちろん、それらも重要です。しかし、それだけで人が成長するわけではありません。人が本当に成長するのは、「自分の成長に意味を感じられた時」だと思います。
・会社がどこへ向かおうとしているのか
・自分の仕事は何の役に立っているのか
・自分は何のために、どんな人生を送りたいのか
それらがつながった時、人は初めて主体的に行動し始めます。
近年、「人的資本経営」という言葉をよく耳にするようになりました。スキルや知識を高め、生産性を向上させることはもちろん重要です。しかし私は、それだけでは十分ではないと考えています。これまで多くの若手社員と面談をしてきましたが、能力の問題というよりも、
・自信がない
・目標が見えない
・何のために頑張るのか分からない
という状態にある人が少なくありませんでした。
だからこそ必要なのが、希望や自信、挑戦する意欲、困難を乗り越える力といった「心理的資本」です。人的資本と心理的資本。この両方を育てていくことが、これからの企業の人材育成には欠かせないと感じています。仕事に必要なスキルだけであれば、大手企業の方がバックアップ体制も教育体制も充実していますが、関係性構築の点からいえば、中小企業の方が目の届く範囲が広く、より丁寧に対応できるのではないか、と考えます。
組織も変われる
ここまで人の成長についてお話してきましたが、実は変われるのは人だけではありません。組織もまた変わることができます。様々な企業様でサポートをさせていただく中で見えてきたのは、「組織の変化は、人の変化の積み重ねから始まる」ということです。
現場の改善活動などで特に感じるのですが、メンバーの目に光が宿り始めると、活動に直接参加していない人も含めて、現場全体の雰囲気が変わっていきます。最初は受け身だった社員が自ら提案をするようになる。部署を越えた協力が生まれる。仲間の活動を応援する雰囲気ができる。
こうした変化は決して派手なものではありません。しかし、その積み重ねが組織の文化となり、やがて会社全体を変化させる力へと成長していきます。
また、会社の方向性を共有し、一人ひとりが自分の役割や成長について考える機会を持つことで、組織は少しずつ同じ方向を向き始めます。人の成長が組織を変え、組織の変化がさらに人の成長を後押しする。この好循環こそが、これからの組織づくりに求められる姿ではないでしょうか。
最後に
残念ながら、人材不足は今後さらに進むでしょう。だからこそ企業には、「人をどう採用するか」だけではなく、「今いる人たちがどうすれば輝けるか」を考えることが求められています。
・会社の未来と個人の未来を重ね合わせること。
・共に学び、共に成長すること。
・そして、仲間の成長を喜び、自らの成長にも喜びを感じられる組織をつくること。
・仕事での成長と人間としての成長を通じて、より豊かな人生を実現すること。
その積み重ねが、結果として企業の持続的な成長につながるのだと私は信じています。
6回にわたりお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
本連載が、皆さまの組織づくりや人材育成を考えるきっかけになれば幸いです。
林 万美子 (Mamiko Hayashi)
株式会社アスカコネクト 代表取締役/MBA
新卒で地元京都の信用金庫に入庫、主に融資業務に携わる。金庫在職中に経営について興味を持ちMBAを取得、2016年に金庫を退社。その後、金庫OBの経営するコンサルティング会社を経て、2018年アスカコネクトを設立し代表に就任、現在に至る。

