Newsletter vol.16 社長が博士課程の学生になると何が起こったか②
長沼 恒雄
2014年4月からビジネススクールに通い始めた。記憶だけなのであいまいだが、40~50名くらいの人が一緒に入学したと思う。社会人ばかりなので、職業、年齢は様々であった。仕事をしながら、夜間、休日に学校で勉強するという意識高い系の人ばかりなので、切磋琢磨した。私のような現役の経営者も数名おられた。
先生方はアカデミアと実務家出身の方が半々くらいの構成で、違う視点での講義は面白かった。
講義の内容は経営戦略、組織管理、人材マネジメント、事例研究などのマネジメント系のものが多かった。理論としてこのようなことを学ぶのは初めてで、とても刺激的であった。どの授業でも毎回宿題が出るのだが、その基本的な考えは「あなたの会社ではどうなのか」という実践的な問いに対してレポートを書くことが多かった。私の場合は経営者なので、宿題そのものがアスカでの課題と捉え、レポートをアクションプランとして、アスカでただちに試行した。スクールを修了してから、会社を変えるという「のんびり」したことを言っている場合ではなかった。その結果、リアルタイムで会社がおおいに変化し、成長した。
代表的な事例を2つ紹介したい。「中期経営計画(3か年)」の策定である。スクールで学ぶ前は、中期経営計画の策定手法も知らなかったし、大企業のものだと考えていた。現在は3回目の中期経営計画がアスカでは動いており、会社のマネジメントの屋台骨になっている。2つ目は「人材育成と評価システム」の構築である。これは人材マネジメント関係の授業が始点である。大企業と中小企業の人材の背景は異なるので、構造的な人材マネジメントなど中小企業ではできないと考えていた。宿題レポートにそんなことは書けないので、学びをもとにアクションプランを書いて、やり始めた。それが今や、他社に向けて「人材育成・人事評価セミナー」を有料で開催するレベルまでに成長した。9年前には想像できなかったことである。
ビジネススクールでは修士論文の代わりに「課題研究」なるものがある。2年目の後期に学生が希望した担当の先生に指導を受けて、研究論文を作成する。これがスクールでの学びの集大成となる。その1年前には「課題研究基礎」という授業を受けて、そのフレームや進め方を学ぶようなカリキュラムになっている。しかし、本格的な論文を書いたことのない自分には雲をつかむようなことであった。 私は、経営学が専門のT先生から「課題研究」の指導を受けることにした。T先生のゼミを選んだ理由は、以前に受講した際に先生の指導にただならぬ厳しさを感じ、自身の忍耐力を鍛えたかったからである。半年間、ウィークデイの仕事後に論文を書き続け、毎週日曜日に指導して頂いた結果、成績評価はA+を頂けた。この厳しい指導があったからこそ、さらに上位の博士論文を書くための精神面での準備ができたのだと思う。次回は「課題研究」論文の内容を紹介したい。
長沼 恒雄
アスカカンパニー㈱ 代表取締役 兼 CTO, 博士(情報科学)
アスカクラフト㈱ 代表取締役社長,㈱アスカコネクト 取締役
加東市商工会 副会長
株式会社サクラクレパスで品質管理を担当.その後,父親の経営するアスカカンパニー株式会社に入社し,アメリカの現地法人社長などを経て,2代目の後継者として約20年間社長として会社を牽引.現在は3代目の弟の長沼誠に社長をバトンタッチ.