Newsletter vol.10 『気づき』の大切さ
林 万美子
このニュースレターに目を通して頂いている皆さんは、経営者、社員、フリーランスなど、様々なポジションで労働に従事されていると推察する。皆さんのワークライフにおいて、今日の自分の形成につながった「きっかけ」はいつ訪れただろうか。
「学生時代から何も変わってない」という方は少ないだろう。インパクトの大小はあっても、何かしら気づきや成長を促されるタイミングがあったと思う。上司や同僚からの働きかけかもしれないし、社会人として経験を積み、視野を広げる中で自然に思い至ったことかもしれない。私の場合は、社会人3~4年目の上司に本気で向き合ってもらった事がきっかけで、自己成長できる軌道に乗せてもらえた。幸い皆さんも私もそういった機会に恵まれたが、こういった経験を得た事は、いま風に言えば単に「ガチャ」に当たっただけなのかもしれない。昨今、リスキリングという言葉が巷にあふれているが、男女関わらず「そんなの今更言われても」と感じている、成長や気づきのきっかけ「ガチャ」に外れた人も比較的多くいるのではないだろうか。
現在、20代~30代の若手に向けた社内研修をする中で、こういった「気付き」のタイミングを出来るだけ早い段階で雇用側から提供することが、人的資本の考えにおいて非常に有効であると感じている。成長につながる「気付きのきっかけ」を本人任せにするのではなく、積極的に提供することで人としての成長を促成させ、仕事での活躍の機会の範囲を広げるのである。
経営学者ロバート・カッツにより提唱されたカッツ理論では、リーダーから経営者に必要な能力として、図1に示す通りコンセプチュアルスキル(概念化能力)、ヒューマンスキル、テクニカルスキル(業務遂行能力)を掲げている。現代においては、図2に示すように若手の一般職のうちからコンセプチュアルスキル・ヒューマンスキルを身に付ける必要があると考える。
具体的には、20代を前期・中期・後期にわけて、段階的に教育を提供する。各研修のテーマとして、前期は「お金・時間・メンタル」のセルフコントロール、中期は自立性・有能感・関係性の獲得、後期は他社・組織と自分の人生を重ねたライフプランの検討、としている。ワークライフバランスとはワークとライフ両方のバランスを上手く取りながら、成長を続け、充実した人生が送れるよう「自分の人生を自分ゴト化し、ウェルビーイングを目指そう」という取組と考える。 従来の社員教育は、業務遂行能力のみに焦点が当てられ、優秀な技能者やプレイヤーが管理職になった途端に力を発揮できなくなり、マネジメントに戸惑いを覚え伸び悩むという事も多かった。今後はこのような若い時の研修の実施により、人材の機会損失を出来るだけ減らす事ができると考えている。